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【せなか】武装錬金萌えスレPart22【合わせ】より

最初の5人

親衛騎団はよくできた敵たちだと思います。押忍。



オバケ工場の中。猿渡の前に何やら大きな包みを降ろす巳田。
「…なぁ、巳田よ。何持ってきたんだ?」
「山本だか田中だかそんな名前の生徒会書記から没収した、ダイの大冒険全37巻。
学校に置いておくと、他の教師から貸して貸してと言われて面倒臭いから持ってきた」
「学校に全巻持ってくるなんざおかしくねぇか? 絶対トモダチいねぇなそいつ」
などといいつつ、包みを無遠慮に開けて単行本をめくる猿渡。面倒臭げに見つめる巳田。
「ま、俺も好きだがね。ダイの大冒険。36巻は何度読んでも泣ける」
「夜の街で高校生からカツアゲするようなヤクザが言うコトか?」
「仕事は仕事。趣味は趣味だ。うちの若いモンにも人気だしな」
カツアゲって仕事か?と思ったが、面倒臭いので言わない巳田。
「とにかく、ダイはいい。…ダイはいいぞ…… ヒュンケル巳田ぁ…」
「ウソ泣きするな。クロコダインの物真似するな。死にそうにないあだ名つけるな」
「なんだ、結局オマエも読んでるんじゃねぇか。面倒臭がりのクセに」
「…別に。ヒマだったからな」

何考えてるか分からない目の巳田。続ける猿渡
「ところで、俺たちって親衛騎団に似てねぇか? 俺がブロック。オマエがシグマ」
「…シグマは好きだが、微妙な上に段々人を選ぶ会話になってきたな」
「知ってるぞ。ブロックは大きい体のヤツで、シグマは細身で白目の馬だな」
なにやら白いものを持ちながら、巳田の背後に立つ鷲尾。
ヘビだからオオワシが本能的に怖いのだろう、巳田は珍しく驚いた。
「け、気配を絶ったまま人の後ろに立つな」
「と言うかオマエ、何喰ってんだ?」
「うさぎ。食べるか?」
よく見ると首がないうさぎを口に運ぶ鷲尾。
ホムンクルスの形態の方が喰いやすいのに、何故わざわざ人間形態で喰うのかと思う巳田。
「ネズミの方が食べやすいから遠慮させてもらう」
赤い血にまみれながら、骨をバリバリ砕き食べる様に戦慄を感じる猿渡。
「お、俺は花房にバナナを頼んでるからいい。ところでオマエが居るってコトは」
「創造主ならあちらだ」
ゴクン。うさぎを飲み込んで、数十メートル先の壁際を指差す鷲尾。先には息をつく蝶野。
「血を吐かれたので、少し休まれるとのコトだ」
蝶野をぼんやりと見つめる巳田。死ねば自分も彼も楽になるのにと思った。
「…な。主人の体がボロボロなのも親衛騎団に似てねぇか?」
蝶野をちらりとだけ見て、話を戻す猿渡。口調には意を得たとばかりに熱がある。
「まだ続けるか」
「仕えている方が、望まぬまま与えられた死の影で懸命に生きようとしているという点では似ている。
肉体を捨てて死に近づいたハドラーと、肉体を捨てて死に遠ざかろうとされている創造主は正反対だが」
付き添おうとしたのだが、「コレやるからしばらく一人にさせろ」と4羽のうさぎを貰った鷲尾。
別に腹は減ってないが、大事そうに2羽目を口に運ぶ。
ブチ。首が食いちぎられる音に顔をしかめる巳田、声を大きくする猿渡。
「オマエは親衛騎団でいうと誰かねぇ? シグマっぽいが、巳田がシグマ大好きっ子だしなぁ…」
「だから変なあだ名をつけるな」
「少なくてもアルビナスではねぇのは確かだな。アルビナスは花房。これは間違いない」
「…あんた、人に買い物行かせといて、自分は漫画の話?」
花房登場。持っている買い物袋にはバナナやら鶏肉やらウィダーインゼリー。

「ご苦労」
「うさぎ食べるか?」
事務的に礼をいう巳田と、3羽目のうさぎを差し出す鷲尾。
「うさぎならその辺に埋めといて。土に還して根で吸った方がおいしいから」
「わかった」
わざわざ腕だけをホムンクルスにして、穴を掘ってうさぎを埋める鷲尾。
「って、鷲尾がいるってコトは創造主も?」
「ああ、あそこに」
礼も言わずにバナナをぱくつきながら猿渡、蝶野を指差す。
また血を吐いてピクピクしている蝶野。色をなす花房。
「い…いかがなされました創造主ィィィィィィィィィ!」
どさどさ。買い物袋を落として駆け寄っていく。
「アルビナスだな…」
「アルビナスだろ?」
感心したように呟く巳田と、ニヤニヤと機嫌良く笑う猿渡。

「で、残る問題は、鷲尾を親衛騎団の誰に例えるかだ」
「だからどうでもいい。むしろキサマが問題だ」
「ね、ね。彼ならハドラーのが合ってるんじゃないかしら?」
ぜーはーぜーはーと息をつきながら戻ってきた花房。
創造主が思ったより無事だったのと、好物のジャムパン貰ったので少し喜色が窺える。
「…合ってはいるな。ならば創造主はヒムか?」
「そうそう。フェンブレンは可愛く無いから」
人間の時の職業が似ているせいか、会話がややなめらかな巳田と花房。
彼らを尻目に、うさぎを埋めた所を羽で念入りに叩く鷲尾。ぺちぺち。ぺちぺち。
そんな間抜けな音を立てるハドラーはイヤだと思いつつ、一つ思いついた猿渡。
「な。な。鷲尾よ。
『さぁいくぞっ!!! おまえたちの忠誠に…この一太刀で答える!!!!』って言ってみそ」
「知ってるぞ。生命の剣を出したハドラーのセリフだな。…では
『さぁいくぞっ!!! おまえたちの忠誠に…この一太刀で答える!!!!』」
ビシッ!と爪など構えつつ、大音声で言い放つ鷲尾。震えるオバケ工場。三様を見せる三者。
「……似合いすぎだな」
「ちょっとカッコいい…」
「待て。鷲尾がハドラーだと色々崩れちまう。だからヒムだ、ヒム。なんとなく合ってるからな」

「あれェ〜 皆さんおそろいでどうしたんですか〜〜〜〜」
蛙井登場。独特の間延びしたクソうざったい口調に顔をしかめながら巳田、花房、猿渡、
「私達の中で一番最初にやられそうだな。絶対に、確実に」
「抜け駆けしそうだし、いなくても差し支えはなさそうだし」
「覚悟や機知や潔さや渋さなんざねぇが、数合わせで」
フェンブレンは決定と蝶野の方へと踵を返す。蛙井、恨めしげに蝶野を見てから話に入ろうとする。
「ね、ねェ。何の話を…って無視かよオイ! バカみたいな話に必死になってんじゃ…」
「うさぎ食べるか?」
なぐさめのつもりでうさぎを差し出す鷲尾。キレかけてたのに鷲尾にビビる蛙井。
「ハ、ハイィィィ! た、食べさせていただきますゥ〜〜」
ジャンクフードが好きなのだが、命を賭けて涙ながらにうさぎを咀嚼する蛙井。
涙を流させるほどうさぎはうまいのかと感心する鷲尾。6人の特にオチのない日常だった。(了)



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