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【若宮千里】武装錬金萌えスレpart39【河井沙織】

おはぎ買いすぎ

(買い物の風景。日常といえば買い物)



夕暮れ時の銀成ショッピングセンターに、主婦や会社員の姿がちらちらと増えてきた。
その様子をぼんやりと眺めながら、河井沙織は和菓子コーナーに佇んでいた。
「お菓子買いに行こうよ!」
と武藤まひろや若宮千里を誘ってから、約2時間。
センターにつくと同時に、まひろがはぐれた。そして迷子センターに保護された。
沙織と千里が引き取りに行くと、まひろは迷子たちと遊んでいた。
「ゴメン… このコたちが帰るまでココにいていい?」
別れを予期して泣きそうな迷子たちを一望すると、まひろは言った。どうも懐かれたらしい。
仕方なく、沙織と千里は二人で趣味を果たすコトにした。
沙織の洋菓子チェックはすぐ終わった。
だが千里の方は、思慮深さが災いしているのか商品を選ぶのが遅い。
それに慣れっこな沙織は、ぼんやりと店の中を眺めている。
ショッピングセンターと言っても、彼女のいるフロアはスーパーマーケットのそれと大差なく
牛乳、清涼飲料水、惣菜、パン、それぞれの売り場の前で商品をカゴに入れる人々が目に入る。

沙織は気付かなかったが、パン売り場にて上皿天秤を難しい顔で見る震洋がいた。
彼は彼の苦しい生活の助けにすべく、10コ100円の揚げパンを1グラムでも多く買いたい。
そこで理科室からくすねた天秤の出番というワケだ。
大小さまざまの揚げパンを右と左に10コずつ乗せて、より多くパンを買えるよう頑張っている。生きるために頑張っている。
そして彼は5分後、揚げパンを大人買いしにきた火渡に
「てめェ! 俺の揚げパンちゃんを触りやがったなァッッッ!!」
と蹴りまわされる。
だがそれは本筋と関係ない。火渡も金持ってるなら肉とか野菜買えよ。

沙織の目が止まったのは、震洋の心臓が止まった頃だった。火渡は千歳に耳を引っ張られどこかへ消えた。
「ね、ね、ちーちん! 秋水先輩と桜花先輩が買い物してるよ!」
「別に珍しくないでしょ。先輩たちだって買い物ぐらいするわよ。まずはコレを」
千里はおはぎをカゴに入れた。
秋水と桜花は何やら楽しそうに話しながら、コロッケとアジフライを物色している。
「きゃあー! まるで熟年夫婦みたいに寄り添ってる武藤先輩と津村先輩が来たー!」
「冷やかさないの。えーと、ちょっと高いけどコレにしようかな。後は…」
千里はおはぎをカゴに入れた。
カズキは青汁を指差して何か言った。斗貴子は赤くなりながら不承不承頷いた。
「おお、武藤先輩たちと秋水先輩たちが出会った。なんだか嵐の予感!」
「起きないと思うけど。よし後はコレとコレとコレ! でもちょっと足りないかな」
千里はおはぎをカゴに入れた。
いつも通りに話すカズキと秋水の横で、桜花と斗貴子は不穏な空気を漂わせている。

不意にアナウンスが流れた。
『えー ただいま5時になりました! たぁだいまからっ 5分だけっ! 5分だけっっ!
牛肉、豚肉、鶏肉、全品半額のタイムサービスを実施します! 皆様、お買い逃しのないよう、お急ぎください!』
私には別に関係ないや、と目を細めた沙織の前で、斗貴子が走った! 次いで桜花も走った!
「斗貴子さんッ! 青汁カレーに使う肉はちょっと高くたっていいよ! 斗貴子さんが作ってくれるならなんでも!」
「姉さん! 肉なら、このまえ俺が山で仕留めたよく分からない動物のが、まだ冷蔵庫いっぱい残ってるよぉー!」
カズキと秋水の絶叫もなんのその、桜花は御前だけを発動させて斗貴子にけしかけ始めている。
肉は既にどうでもいい。要は相手に負けたくない。、勝って見下して笑ってやりたい。
そういう執念で二匹の鬼女は肉売り場へとひた走る。千歳はししゃもと塩辛を買ってブラボーと帰った。
「ほら、嵐はやっぱり起こった!」
「そうだね。よし、これでOK。待たせてゴメン沙織」
千里はおはぎをカゴに入れた。沙織は大口を愕然と開けてとてもビックリした
「カゴがおはぎで満杯! ちーちんおはぎ買いすぎ! 好みが偏りすぎ!」
「そう? これでも妥協した方なのよ」
その後、迷子センターの子たちにおはぎとケーキをあげて三人は帰った。

そして駐車場にて火渡は、鳩と一緒に揚げパンを食べていた…… 終わり。



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