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【遊ぶのでしたら】武装錬金萌えスレ36【お早めに】より

桜花デレラ

(柳の下のどじょう狙いの感もやや否めず)



昔々あるところに、意地悪な継母と姉たちと暮らしている少女がいました。
少女の名は桜花。通称シンデレラ。
浮気のイザコザで母親が家を出た後、父親が酒びたりで死んだので毎日肩身の狭い生活です。
継母の名前は火渡子で、姉は毒子と根来子です。
本当はもっといたのですが、シンデレラが知恵を駆使したのでなんとか残り三人です。
ある日、お城から舞踏会のお知らせが来ました。シンデレラは継母に泣きつきました。
「私も舞踏会くらい行ってもいいでしょ? マジメに生きてるんだから…えーんえんえん」
「チッ、しゃーないわね! 連れてけばいいんでしょうが!」
シンデレラはウソ泣きしながら、「もらったッ!」と思いました。
王子の一人や二人楽勝だと思っています。妄想に取り付かれています。
「化粧はうっすらとするべし。きゃあこの新しきマフラー、超カワイイ!」
「お母様、口紅を塗りすぎですよ」
「るさいわよ! 私に意見するとブッ殺すわよッッ!」
珍しくはしゃぐ根来子は、まぁそこそこのレベルですが、毒子は名前からしてアレです。
そして口紅を塗りたくっている継母は、化け物のような形相です。
(ふふ、せいぜい私を引き立たせるために着飾りなさい!)
きらびやかな舞踏会に思いを馳せ、恥ずかしげに笑う桜花の横で、
「ヒヒーン!」
ロバの秋水が嬉しそうに鳴きました。
彼は桜花の弟で人間なのですが、汚れていく姉を見たせいでロバなのです。
「ところでシンデレラ。キミ、衣装は持っているのか?」
シンデレラは自信が崩れ去るのを感じました。
衣装は、犬飼子が死んだ原因不明の火災のせいで焼失しているのです。

場所は変わって、シンデレラの部屋です。
戦部子と円山子がナゾの病気で三日三晩血を吐き続けて死んでから彼女はココを手に入れました。
シンデレラは善後策を検討します。
傍らのロバはビクビクしています。姉が何かを考えた後は決まって誰かが死ぬからです。
「こんにちはー!」
ロバの怯えを払う明るい声が部屋に響きました。
「あなたは誰?」
「私は魔法使い! あのねあのね、シンデレラさんを助けに来たんだよ!」
なんかアレな喋り方なのでおそらくこのコはアレでしょう。
シンデレラは一瞬眉をひそめます。
しかし不都合があっても後で処理すればいいだけなので、ニコっと笑いました。

「可愛い魔法使いさん、豪邸と、従順な王子様と、有能な下僕6000人と、使っても減らない札束は出せるかしら?」
シンデレラは率直で即物的です。モノさえ手に入れば舞踏会などどうでもいいのです。
「わかった! 豪邸と下僕さんたちは向かいの空き地に出すよー」
魔法使いも素直です。言われたモノを全部出してくれました。王子様は隣国の王子様です。
「斗貴子せんぱーい…ってアレ!? ここはどこ!?」
王子様はキョロキョロしています。ルックスはまぁまぁなので、シンデレラはとりあえず妥協しました。
「あなたは私の夫になるのよ」
「ええーっ!」
王子様は驚きましたが、シンデレラは美人でスタイルもいいのでこれまた妥協しました。
理想と現実は上手く折り合いをつけるべきなのです。
落差に悩み続けていると「ヒヒーン!」といななくどこかのロバの様に壊れてしまうからです。
シンデレラはそれを良く知っているのです。
「ロ、ロバさんとデート……デートしてもいい?」
魔法使いは遠慮がちにロバを見ながら、真っ赤です。やがて俯きます。
どうやら見た目麗しいロバに一目惚れしたようです。
ロバは急にスポットがあたり、そして久々に人間の暖かな感情を向けられたので戸惑っています。
しかしその初々しい空気はシンデレラにとり、時間の無駄以外の何者でもありません。
どうせすぐ冷える甘ったるい感情です。冷えれば揉めて無駄に傷つくだけです。傷ついても誰も慰めてくれません。
両親の不仲を見て育ったシンデレラは、心底からそう思っています。
でもロバにとってはマシかも知れません。
最初だけでもキレイな感情を味わえるのですから。
ひょっとしたら、再び言葉を取り戻せる日が来るかも知れません。
「…好きにしなさい。なんなら引き取ってもいいわよ」
シンデレラが小さく呟くと、ロバはとても悲しそうな瞳をしました。
そんなこんなで、4人の物語は始まったばかりです。

「きゃあー」「逃げろー!」
舞踏会は王子様を中心に、かつてない盛り上がりを見せています。
王子様に近ければ近いほど、生命力を吸われるのです。踊ろうものなら。
「根来子! 根来子ォ──! オイコラ冗談はよしてよ! 死んだらブッ殺すわよ!!」
「フ、フフッ、お母様…あなたの子供で良か…った…!(ガク)」
「午後10:15…死亡ですね…」
こうなります。
実は舞踏会とは名ばかりのカーニバルだったのです。終わり。



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