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【2次】漫画SS総合スレへようこそpart44【創作】 より

誕生日に選んだモノ

たまにはマジメに描いてみました。やはりこの2人はいいですね)



さて、カズキの部屋に来たのはいいがどうしたものか。
正直、私は他人の誕生日などを祝った経験がない。
「え、ブラボーとか剛太のも?」
ああ、ない。
考えてみろ。戦士長はつい最近まで素顔も名前もわからなかったんだぞ。
誕生日なんか分かるワケがない。
分かったとしても、戦団でそういう浮ついた行事をするワケはない。
剛太も私も誕生日について深く考えたコトはないし、祝って欲しいと思ったコトもない。

だからだカズキ。正直、私はキミの誕生日に何をプレゼントすればいいか分からない。

パピヨンみたいにトチ狂った趣味の衣装とマスクを臆面もなく出せないし、桜花のように高級
レトルトカレーの詰め合わせを贈ったりはできない。
ケーキはまひろちゃんたちが作ったから買ってくる訳にはいかないし、秋水のように剣舞を
やるのも何か違う。戦士長なんかは秘密基地と称して屋根裏にキミの部屋を増設したが、
規則違反だから私は真似したくない。
火渡戦士長はしいたけを段ボール50箱分送ってきたが、キミの嫌いなモノだから論外だ。
そういえばキミの友人たちはヤケに分厚い本をプレゼントしていたが、アレは何の本? 
マンガが好きなキミに辞書や辞典は合わないと思うが……
「そ、それは秘密。中に別の本が入っていたりはしないから」
ああ例の綺麗なお姉さんがいるのか。そう怯えるな。別に私は怒ってなどいない。
「ゴ、ゴメン」
だからいっているだろう。別に私は怒ってなどいない。ほどほどならばエロスも結構。
とにかくだ。私はキミの欲しいモノが思い浮かばない。
だからあればいいなさい。布団や本棚みたいな家具でもいい。
逃避行で下ろした貯金も実はまだ半分以上残っているから遠慮はいらない。
「じゃあ一緒に探す?」
何をいい出しているんだこのコは。
大体、誕生日プレゼントというのは貰うモノじゃないのか?
「んー。確かにそうだけど」
カズキはアゴに手を当てて目を細めた。時々思うがこのコの仕草はいちいち戦士長に似ている。
「今は斗貴子さんといるだけで満足だから、特に欲しいモノは浮かばないというか……」
う、うるさい。
そうやってベタベタした意見をいうのはバカップルだ。長続きしないんだぞ。だからやめろ。
「とにかく一緒に行こう! 斗貴子さん!」
カズキは私の手を取って走り出した。
「あ、でも外は寒いからコレを!」
そして私を引きずったままくるりとUターンをして、ベッドにあったマフラーを私に掛ける。
抵抗しようかと思ったが、どうせ何かを思いついた時のカズキに勢いで勝てるワケもない。
だからさっさと終らせるためにじっとする。彼の手の動きを見ながら。
……まったく、キミはもっと不器用だと思っていたがこういうのは得意なんだな。すぐ終った。
「昔はまひろによく掛けてたから。あ……待って」
カズキは不意に顔を私に近づけてきた。
何を考えているんだキミは。まだ日も高いんだぞ。
いいか余計なコトは考えるな。考えるな絶対。したらブチ撒けるからな。
「よし! コレで完成! カッコいいし寒くない!」
マフラーの両端を私の背中にかかるような掛け方をすると、カズキは無邪気に喜んだ。
コレはあれか。再殺部隊の根来のマフラーか。
そうかそうか。キミはこんな下らない真似事で私を弄んだのか。
肺に貫手の一つでもブチ込んでやりたいが、誕生日だから勘弁してやる。

ともかく街に出たが、そもそもキミは何かアテがあって出てきたのか?
「全く!」
だろうな。まぁいい。どうせ私にもない。好きなように歩け。
だが手は離せ。通行人の目線が少々痛い。
「だって斗貴子さんの手、すごく暖かいから」
暖かいのがいいなら手袋を買え。というかプレゼントと別に買ってやる。
だから離せ。ってなんで私の手をとってそんなに見る。やめろ。
「それに綺麗だし」
黙れ。公衆の面前でバカなコトをいうな。離すんだ。
「握っているとちょっと気持ちいいし。斗貴子さんは違う?」
…………                                        //////
頼むから離してくれ。お願いだ。
「それにゴメン」
何を突然謝る。
「ヴィクターとの戦いの時、オレ、嘘ついたから。だからもう」
過ぎたコトはいい。今は手を離すんだ。状況は色々違う。
「この手を離すもんか!」
真赤なちかーい…じゃなくて! もういい! 繋ぎたければ繋げ!

映画館に入って2時間ほどホラー映画を見て、それからファミレスで食事をとった。
で、そろそろ欲しいモノとやらは見つかったか?
「斗貴子さん見て見て、ここにも蝶野のフィギュアがある! アイツ本当に楽しんでいるなぁ」
人の話を聞けェ!
誕生日におかしな衣装を送る奴のコトはどうでもいい! 
今はちゃんとしたプレゼントを探すのが先決だ!
「まぁまぁ。焦っても仕方ないし、ゆっくり探そう」
キミはそうやって笑えば済むと思ってるのか? 
まぁ、確かに焦って見つかるモノでもないが……怒鳴って悪かった。
「考えてみれば始めてかも」
何がだ。
「斗貴子さんとこうやって過ごすの」
確かにそうだな。何の心配もなく普通に街を歩くのは。
正直、春頃の私はこんな生活なんて考えても見なかった。
「オレは楽しいけど、斗貴子さんはどう?」
まだ戸惑いの方が大きい。7年間も戦士をしていたからな。
感覚が日常に馴染んでいない。
「そう……だよね。でも大丈夫! コレから慣れていけるよきっと」
だといいがな。
……でも。
キミが傍にいなかった1ヶ月間に比べたら、今は恵まれすぎているとも思う。

食事が終った後は、大型ショッピングセンターに行った。
これだけの規模だ。キミの食指が動くモノも一つぐらいはあるだろう。
「ゴメン。言いそびれたけど」
コラ。意見があるなら行動する前にいうべきだろう。で、何だ?

斗貴子さんがお金を出してくれるんだから、ヘンな物は変えないとゆーか」
何を今更。遠慮はいらないっていっただろう。
大体、私がキミの趣味に合わないモノを選ぶ方が良くない。
「そうだ、それだよ斗貴子さん!」
キミは嶋さんか。
「やっぱりオレには選ぶコトはできない! だから斗貴子さんに選んで欲しい!」
なななな何をいいだすキミは。私はそもそも誰かに贈り物なんかしたコトがないんだぞ。
もしキミがおかしなモノを大事な誕生日に押し付けられたら迷惑
「心配無用! 斗貴子さんが選ぶモノなら何でもOKだよ」
くそう。嫌な気配だ。押しても引いてもこのコのペースに巻き込まれる気配だ。
分かった分かった。私が選ぶ。だが私が選んだモノがイヤならすぐいうんだぞ。
「了解ッ!」
とはいうが何を選べばいい?
カズキの好物のカレーは桜花に取られたし、ケーキはまひろちゃんのがある。
マンガは贈り物には安すぎるし、まさかいかがわしい本を選ぶワケにもいかない。
家具なら無難だが、実の所カズキの部屋で不足しているモノはない。
……待て。家具じゃなくても日常生活に密着したモノなら送っても不便ではないな。
ただ、消耗品は良くない。安いしすぐに捨てられる。
つまりだ。

1.ある程度の値段で
2.この先も使えて
3.カズキが必ず必要とするモノ

を選べばいいんだが…………
…………そうか。パピヨンの奴は案外、そういう部分を考えていたのかも知れないな。
決めたぞカズキ。ついて来い。

それを買うと部屋に戻った。
「わー。お兄ちゃんカッコいい!」
「うん。斗貴子さんが選んでくれたんだぞ」
私が選んだモノをまひろちゃんに見せびらかすカズキはなかなか嬉しそうだ。

ひとまず気に入ってくれたようで安心した。
もうあと1年もすればキミも就職するだろう。
なぜならキミはもう戦士じゃない。今日のような日常を過ごし続ける普通の少年だ。
どんな仕事を選ぶかは分からないが、面接の時ぐらいはそれも要る。
普通の紺色のスーツぐらい、今のうちから持っていても損はないだろう。
「ありがとう斗貴子さん」
礼には及ばない。私に感謝するなら、卒業まで樟脳とでも一緒にしまっておけ。
「うん。大事にする」
満面の笑みの彼に、私はひとまず安心した。
それから。
誕生日おめでとう。カズキ。



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