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第4話 「呂后の最期」



前回までのあらすじ。
敗走中に現われた〜 妾の戚だけ愛してる農民出の皇帝・劉邦太祖〜♪
正妻呂后を殺すため、3つのしもべに命令だ! やぁ!
丞相蕭何ぁ〜 ナスを食え〜 張良子房は輪を撃て! 韓信、元帥! 股くぐれ〜

という事で本編。

森の霧はいよいよ強い。
そこへ影のように佇むのは劉邦一派と呂后である。
「笑うな!」
蕭何の一喝と共に、文字はアゲハ蝶に姿を変え、呂后の周りを飛び回る。
「アウアウアウー!」
それを振り払う女の顔は、絶叫してヨダレを撒き散らしていて、醜い事この上ない。
と劉邦が思っていると、状況に変化が起きた。
中空を殴りまわす呂后の動きが、目に見えて遅くなりつつある。
『この蝶どもは』
呂后の背後六メートルほどの地点に色とりどりの蝶が集結し、渦を巻いたとみるやそれは
だんだんと人の形にもつれあった。
蝶の人形がふむとアゴに手を当て、呂后をゆったりとねめつけた。
『ふれるとしばらく体がきかない』
やれやれというようにわざとらしく首をすくめると、懐に手をやった。
呂后の体に緊張が走る。玲瓏なる空気を悟ったのだろうか。
一体にしてどうであろう。蝶に取り巻かれた空間より蒼く光る刃がするする出ずる。
ただにして蝶が密集するだけの空虚な空間より、二尺八寸ほどの刃がするすると。
『必死に縄を解いた挙句に動けない。皮肉だな』
蝶の人形、刃を浅く構える暇すら惜しみ、呂后めがけて駆け込んだ。
蝶が散る。熱戦を浴びたロプロスが機械部を露にするように、張良の姿が現れる。
彼はやがて呂后の背後に肉薄。呂后の動きは鈍い。体がようやく振り返り始めたといった
様子だ。そこへ容赦なく白刃が振り下ろされる。
『終わりだ』
その時、比嘉の殺し屋が動いた。
呂后の体が妖しく瞬いたかと思うと、ガイアーよろしく光のつぶてが全身から放たれたのだ。
彼女と張良の距離はこの時、ほぼ零といってよかった。小札ではない。メートルだ。
いわば密着状態のカウンター。当たるべくして当たる攻撃といえよう。
だが!
光のつぶては不自然な軌道を描くとことごとく張良から逸れ、あらぬ方向にかき消えた。
「いかな手段(て)を打たれようと既に守りは固めてあります」
韓信はぼーっとしたまなざしで霧を見た。
「これ、私が出した霧なんですよ。霧というかチャフ。かつて地球にやってきた宇宙人たち……
要するに魔界衆の残した道具です」
「ああ、あの上巻が面白いのに下巻がいまいちな……違うわ! 武装錬金ネタ混ぜんな!」
「ははは。漢王はおかしなコトを申される。どこからどう見ても魔界衆の道具ではありませぬ
か。そりゃ確かにHPの武装錬金長編SSに間違ってこのSS追加しましたが、別に帳尻合わ
せで武装錬金ネタふってるワケじゃないですよ。好きだからやってるんです」
「結局認めてどうする!! 本当お前、たいがいにせいよ! 二年前はあんなに横山作品一
本だったの……いや、VSさんぽい作品紹介とか作っていたから既にあの頃から横山作品一
本じゃなかったのか!? つか早いな時の流れるの! バキスレに来てもう二年かよ!」
怒りの劉邦は韓信の胸倉を掴んで、一気にまくし立てた。
「さぁ。作者にでも聞いてください。ところで鉄人完全版の最終巻発売日は二〇〇〇年七月
二十八日ですが、土曜日なので変わってしまう恐れがありますね。早く買えればいいですが、
遅くなったらがっかりかも」
「誰がそんな微妙な横山情報をよこせといった! 聞く耳持たずもたいがいにせいよ! どう
せなら闇の土鬼文庫版上巻売ってる場所をヤフオク以外で教えろ!」
「ははは。無理ですよ。どこもかしこも品切れ。でもいいじゃないですか。どうせ買っても土鬼
土鬼ナースのフラッシュを作る時間なんてないんですから。去年の年末だってポケモンルビー
に夢中で何もできなかったではありませんか。あ、ジグザグマにまひろとかつけるセンスは
どうかと」
「ぐぬぬ。キモリが秋水だとか、またどうでもいい楽屋落ちを…… もうええわ! 好きなよ
うにやれ! わしは知らん! 後がどうなろうと自業自得じゃ!! 鉄人最終巻も月曜日の
夕方に買うはめになってそれまで仕事中悶々としてろ!」
社会人はえてしてそういうものである。武装錬金のDVDも発売日に買えたためしがねえ。
「つか発売日を合わせるぐらいなら巻数も二十八にしろよ!」
蕭何を蹴りまわし始めた劉邦を、心底不思議そうに見ながら韓信は解説を続けた。
霧のコトである。
「拡散状態の特性は、方向感覚を狂わせるコト。この霧の中では一メートルの距離から狙っ
たとて、張良どのには当たりません」
『それともう一つ。誰も気づかないならわざわざ言う必要もないと黙っていたが』
蝶を一匹、唇の上にひっつけた張良がニヤリと笑う。まるで蝶のヒゲを生やしているようだ。
『狂わせるのは方向感覚だけでなく”距離感”もだ』
しまったとか呂后が呟いたかはわからない。
ただ、光のつぶてはことごとく呂后の背面に吸い込まれ、大爆発を起こした。
そのころすでに張良は背後に飛びのいて、『フム』などとつぶやいていたという。
攻撃は終わらない。

──俺は強くなれるだけ強くなりたい。漢王のために! 俺たちの望みのために!!

爆煙が晴れると、なんと呂后の腹部から刃が生えているではないか。
たぶん肝臓のあたりだ。背後から日本刀に貫かれている。

「勝つ! 俺はここで負ける訳にはいかない!!」
刺したのは……蕭何。いったいいつ目覚めたのかはわからないが、すごく爬虫類じみた
顔で(中の人・きっしーは顔真似ができるらしい)呂后の肝臓をブチ貫いて爬虫類じみた
顔で(きっしーの名前の元ネタのおっさんがこの前都知事選に出てた。負けたけど)笑って
いた。目が濁っていた。要するに秋水だ。
「蕭何ァァァァ!」
劉邦は喜色満面で手を広げながら、その男に駆け寄った。

ピュル-z_☆ カン コンカン
♪ こたえはいつも わーたしのむねにー……

「さぁ! さっさと死にやがれですぅー! いつになったらコイツは死にやがるですかピチカー
ト! クレッシェンド!(もっと強く) クレッシェンドぉー!!(もっと強く)」
蕭何は呂后の体内に空気を注入すべく、忙しく手を動かしている。
医学はよくわからないが、空気を入れられると人は死ぬらしい。
「死ねや死ねや漢朝のために!」
そして次の戦争のために。次の次の戦争のために。
やがて呂后は斃れた。おお、ネトラジは途切れがちだがさすがVista。斃れたが一発で出た!
駆け寄ったきた主に拱手をすると、蕭何は冷静に呟いた。
「へい! へい! わっしょいわっしょいサンシャイン!」
「やかましいわ!」
劉邦の右ストレートが蕭何のアゴを打ち貫いた!


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