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第7話 「柴武との戦い」



死闘は続いた。
蕭何が呪符で大洪水を起こせば呂后は高熱で吸収し、彼女が反撃とばかりに地震を起こせ
ば張良は七節棍を地面を打って静める。
勝負は互角。いや……
(二人がかりで互角という段階で)
『芳しくはない』
「悟ったよーねー」
呂后の目から出たビームが蕭何に迫る。
「あたしは一人だけに狙いを絞ればいいだけよぅ♪」

「何……だと?」
行者はまたもつぶやいた。(ブリーチ風に)
「僕の探しているリサが……呂后だと?」
「本当ですよ。だって本人がいってましたから」
韓信はうんうん頷いた。
「バラバラから再生した時ですね、あなたを見て『わはージュンくんだぁ! あたしはリサよー!
やっほー元気してたぁ? あたしはもう未来で暮らすのヤだから呂后殺して成り変ったよー』
とか何とかいってましたから」
「……何という説明台詞」
劉邦はガクリとうなだれた。
「で、バレた以上あなたも殺すッ! と息巻いてました」
言葉を聞いた行者は一瞬目を点にしたが、俯いて、力なく打ち震え始めた。
「どうしました」
「そっとしておけ韓信。ショックなんじゃろう。そうじゃ、食事でも取ろうかのう」
「名案ですね」
「そうと決まればさっさと食おう。チキンっぽい奴を食うのじゃ。あれをがっついて『ふーっ、人
心地がついたわい』というのがトレンドじゃ。これ、誰かおらぬか」
柏手を合図に
「ここにいるマメー!」
ひょこりと部屋に入ってきたのは柴武だ。豆が好きな男で後年韓信を蕭何の指示で殺す権力
闘争のイヌだ。
「おやおやおや〜 この白い人元気ないマメねー。駄目マメよー。元気ないのは〜」
行者のそばにとてとて駆け寄ると、肩をさすったりゆすったりした。
「放っておいてくれ。僕はいまリサ問題で傷心なんだ! 死ねこのマメ野郎ッ!」
だが手をばしりと跳ねのけられ、柴武は色を成した。
「きぃー! チビ人間の分際で生意気ですぅ! 元気ない時はッ! マメを食らいやがるですぅ!」
ちなみに行者の名前はジュンですお察し下さい。
柴武は袋から豆をありったけひっつかむと、の口に突っ込んだ。
「所詮薄汚い野良犬マメッ!!! 何やろうが生活に支障はねえッ! 死ねッ! 死ねッ!!」
狂ったように白眼を向いて豆をがんすかがんすか行者に挿入し続ける柴武を遠巻きに見る劉
邦は頭を抱えた。
(コイツもこうかい)
「いやー大変ですね。はっはっは」
無表情で口だけ空けて笑う韓信にますます頭痛が加速する。
「さあ!! 死ぬマメよ!! 最近の地球の燃え尽きる日の盛り上がりのなさの責任を背負っ
て豆地獄の中で朽ち果てるがいいマメええええええええええええ!!!!」
柴武はもがき苦しむ行者から奇麗な側転で素早く遠ざかり出した。
部屋を抜け庭をつきぬけ、城壁のあるところまで。距離はだいたい500メートル。
そこに到達すると柴武は背中からロケット型のブースターを展開した。
「見えないが↑のブースターとか奴はロボなのか?」
「ロボなのでしょう」
「ふははは!! 螺旋の弾丸よ!! 亜空にたゆたいし忌まわしき障壁を越えて今こそ我が
元に! つまびらかに説明すると片思いしてたのに彼氏作って一緒に歩きながら幸せそうな顔
して俺を鬱のどん底に叩き落としたあの女を越えて今こそ我が元に! あと、片思いなどした
昔の俺は死ねッ!!」
柴武が片手をかざすと、どうであろう。五条のライトグリーンの光が歪みながら徐々に収束し
拳ほどあるグリーンピースへと変化したではないか。
「西洋のティターン族知ってるマメかあ!?」
知らない人はエピG読んでください。もしくはウィキペ読んで。
「ティタノマキアでヘカトンケイルどもが300ぐらい投げたのはこれマメ!!」
劉邦は本当にやるせない。闇の顔の文庫版がどこにも売ってないからだ。
「表面にノロウィルスがたっぷりだから今や連中タルタロスぅぅぅぅぅぅ!!!」
「ちょ、神のクセに拾い食いしたんかい!!」
「まぁ、世界には皇帝なのに自分の子供を逃走中に捨てる人もいますし」
などと会話する二人をよそに、柴武はブースターで加速する!
やがて体は地面と水平に浮き上がったが、ここで異変。
足首がブーストすると同時に切り離され、あとは膝、腰、腹、胸と段階的に吹っ飛んでいく。
その最中、行者は、決然と立ち上がった。
「ああそうかい! さんざん好き勝手やって自分でばらさんでいいコトばらして殺すと!!!」
体からはオーラが立ち上り、瞳は憎悪に濁っている。
「もういいリサ。もう分かった。もう知らない! そもそも女なんぞのためにあーだこーだと旅す
るのはよぉ!! クールな横山作品の主人公らしくねーよなァァァァァァァ!!!」
視線の先で首だけの柴武が叫ぶ! 
「ふははは! 覚醒したようだがもはや手遅れ!! 究極の重加速で滅べえあああ!!」
つかんでいたマメがかなた後方へ吹き飛んでいるのを認めた行者は叫んだ。
「マメ、関係ねえええええええええええ!!!」
放った手刀はみごと柴武の顔面に炸裂した!!!

その頃、張良と蕭何は呂后の放つ小さな分身とか監視ロボに苦戦していた。

とりあえずまず行者は柴武に吹っ飛んだパーツを集めさせた。
集め終えると胸倉をつかんだ。柴武はへつらった表情でごめんなさいを千回ぐらい早口で喚い
てから沙都子殺して失禁したと思う。
「ごめんなさいマメ。己(おれ)が調子こいていたマメ。聖剣伝説3のフルボイスをやろうなんて
二度と目論まないマメ! 五年続けてるSSですらこうなのに、やったコトない演技とかに手を
出しても再生数三ケタも行かず罵倒のコメントがついて死にたくなるだけマメ!!」
「謝るなら許すよ! おじさんはねえ! 道義を守る人はいいんだよ! フルボイスより文章
描くのを頑張るべきだよねえ!」
行者はニコリと笑ってダミ声で叫び散らした。
「あぁそれにしても腹が減ったなあ!! あのリサとかいう馬鹿女を殺す前に腹ごしらえして
おかないとなああああああ!」
「マ、マメならあるマメ。ノロもついてない清潔なマメマメ」
「話がわかるねえ!」
柴武のくれたマメをゴミ箱にブチ込むと、行者はモスに行ってハンバーガーを買った。
「ふぅ。これがさっきまで暴れてた行者か。でも、とてもそうは見えないねえ! ガハハ!!」

「とりあえず話もまとまりましたし、呂后征伐いきますか」
韓信のつぶやきに、劉邦はただ溜息をつくしかなかった。
(徹夜明けだから後で読み返して死にたくなる出来栄えじゃろうなあ……)
と。


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